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ロシア極東の知財制度

2016 十一月 22

黒瀬雅志  ロシアの極東知財制度調査団団長

Masashi Kurose Leader of the Far Eastern IP research group

今年5月ソチで行われた日露首脳会談において、日本則から8項目の経済協力プランが示された。その中に、ロシア極東の産業振興・輸出基地化の協力、中小企業交流・協力の拡大、先端技術協力などが含まれている。ロシア政府は、アジア太平洋地域との経済連携の強化を目指し、ロシア極東の開発を積極的に進めており、日本政府もこれに協力する意向である。今後、日本企業のロシア極東への事業投資が拡大する可能性があるが、インフラとしての知財制度が整備されていることは投資の要件としての重要である。

このような背景から、弁理士、弁護士、企業知財担当者からなるロシア極東知財制度調査団を結成し、今年9月にウラジオストクを訪問した。ロシア極東の知財関連政府関係機関と意見交換を行い、知財制度の運用状況を調査した。この意見交換には、経済産業省・模倣対策室の江本担当官、在ウラジオストク日本国総領事館・高柳領事、伊藤副領事、ウラジオストク日本センター・河原所長も参加した。

模倣品の税関差止

ロシア極東には、ウラジオストク港などを通して中国、韓国、日本などから多くの貨物が輸入されているが、それらの中には模倣品も含まれているという問題がある。極東の税関をすり抜けた模倣品は、内陸部にも拡散していくので、税関で模倣品の輸入差し止めが効果的に実施されることが重要である。

ウラジオストク、ナホトカなどの地方税間支署を管轄する極東税関のグリボナ税関協力課主任他2人税関担当官と意見交換した。ロシアにおいては、モスクワにある税関総局に商標の税関登録を行えば、極東地域を含む全国の税関は、商標権侵害の疑いのある貨物の輸入を差し止めし、その差止情報を登録申請者に通知するシステムが稼動している。2015年には、極東地域の税関は、全国の約11%に相当する行政訴訟を裁判所に提起し、差止めした侵害品を廃棄処分したとのことである。

意見交換では、模倣品の多くが中国から流入していること、自動車部品、玩具、衣類、化粧品などの模倣品が多いことが確認された。また、税関での模倣品チェックの具体的方法、チェックの際に重視しているの情報などが紹介され、権利者側の協力の重要性が確認された。

意見交換を通じで、極東税関による模倣品の水際措置は効果的に実施されていることが確認された。

模倣品の市場での摘発

市場で模倣品が販売されている場合には、警察あるいは反独占庁のメゼヴァヤ担当官他1人と意見交換を行った。反独占庁は、競争保護法を所管し、市場の競争を監視し、不当な独占行為を禁止するための行政機関である。全国に84の支局があり、知財権侵害品の販売行為などの不正競争行為に対し、自ら行政処分を下す権限を有している。

意見交換において、反独占庁が下した行政処分の事例紹介があり、反独占庁が極東においても、知財権侵害行為に対するエンフォースメント機関(権利執行機関)として機能していることが確認された。

裁判所における審理

ロシアにおいては、民事訴訟の他に、税関での水際措置、警察による模倣品の摘発でも、差押え品の廃棄処分を行うには、裁判所に行政訴訟を提起しなければならない。裁判所の審理がどのようになされているかを確認するために、ウラジオストク控訴裁判所で、実際の審理を傍聴した。厳粛な雰囲気の下、裁判官の指揮により審理がてきぱきと進む様子を見ることができた。

ロシアでは、第一審判決が6ヵ月ほどでなされることが多く、他の国々に比べ審理スピードがかなり遠い。また、モスクワには知財事件を専門的に審理する知財裁判所も設立されており、知財紛争を司法手続きにより解決する制度は整備されていると言えよう。

日本との交流に期待

我々とロシア極東の政府知財関係者との交流は、友好的な雰囲気の下に行われた。今後、日本との知財専門家による交流を深めることへの期待が示され、税関、反独占庁のホームページには、意見交換の様子が写真入りで紹介されている。

また、裁判所では、判決言い渡し後に、裁判官と一緒に法廷での記念撮影が許可された。
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